住宅街の夜の道

9月26日金曜、22時頃。妻は通報し自宅に大挙して警察官たちがやってきた。(といっても、4〜5人だったが十分大勢だ)

緊張状態にある夫婦間では何がトラブルにつながるか分からないのだと身をもって感じた瞬間だった。暴力を振るったわけではない、細かい事象をここに書き連ねると変な誤解を生む訳にはいかないし、私の文章力では的確にその時の状況を描くのが難しいため詳細には言及しないこととしたい。

ただ、妻に通報されたというのが事実である。

警察官が4〜5人も来ると見慣れた我が家が一転して見知らぬ場所になってしまう。実況見分というのだろうか、起きたことを細かく質問され、それに答えた。結局、私の主張と妻の主張は平行線であったようだ。

生活安全課の刑事さんから提案されたのは「少しでも冷却期間を置くこと」だった。1週間とか、1ヶ月とかではなく、落ち着くのであれば2〜3日でも、今晩だけでもいいという。当初は、私も妻もそれを拒否した。何故なら、少しでも家を空けてしまえば相手側弁護士に良い主張材料とされ、きっと不利益を被ることになるだろうから。私も妻も、息子の親権が欲しいことには変わりないのだ。

しかし、その生活安全課の刑事から恐ろしいことを聞かされた。

「このままでは息子さんを児童相談所に預けなければならない」

というのだ。子どもの前で夫婦喧嘩をすることは児童虐待にあたるということだった。

「そうなった場合、息子はいつ戻ってくるんですか?」

と私は聞いた。答えは「それは分かりません」ということだった。

息子が児童相談所に連れて行かれることだけは避けなければならないと思い、一時的に私が出ていくと刑事に伝えた。

「では今すぐ着替えてください」と言われ、パジャマ姿から外着に着替えて準備を整えた。それとなく刑事に聞いたところ、妻はそれでも出て行かないと答えていたようだ。私が出発するのを見届けるまで警察官たちは帰れないらしく、彼らは私の着替えが完了するのを辛抱強く待っているようだった。

わたしは大人しく車に乗り込み、警察官たちに見送られながら真夜中の街に向けて車を走らせた。

時刻は24時過ぎ。これからどこへ行けばいいのか。

交番勤務の警察官さんから、「漫画喫茶でもビジネスホテルでもどこでもいいので、今晩は冷却期間とできませんか」と言われたのを思い出し、車を少し走らせたところにある漫画喫茶に向かった。

いつもは混雑して渋滞している道路はガラガラだった。しかし、向かった漫画喫茶の駐車場は満杯で、まさかそんなと思ったけれど漫画喫茶で夜を明かすことはできなかった。

じゃあどうしようかと思い、取り敢えず車を停めることができるコンビニに向かった。このままコンビニの駐車場で寝てしまおうかと思ったけれど、外気温27℃ほどの環境下で暑がりの私が眠れるわけもなく、またまたどうしようかとスマホで24時間営業のファミレスを検索した。ちょうど、これまた少し車を走らせたところに24時間営業のジョナサンがあると表示され、これ幸いと向かった。しかし、店に入るや否や、50代くらいの女性店員さんから、

「26時までの営業なのでもうラストオーダーです。」

と告げられた。どうやら古い情報を参照していたらしい。24時間営業なんて今時ないよなと参照元の食べログをうらめしく思った。そろそろ眠気も高まってきたし、ちょっと不味い状況になってきた。

カーラジオではバナナマンが秩父にある三峯神社に行ったときのエピソードを披露していた。

三峯神社はパワースポットとしても有名でとにかく周辺が渋滞する。だから東京から行くなら午前3時くらいに出発するといい、というような話をしていたのを聞き、このまま三峯神社にでも行こうかとも考えた。1週間を働き抜いたこの疲れた身体で運転したら、一時的な冷却期間どころか、わたしの身体が冷たくなって無言の帰宅をすることになるかもしれないと思い、やはりそれも諦めた。

もしかしたら近くのスーパー銭湯なら営業しているのではと思って調べたが、営業時間は24時までであった。

もはやダメもと、とさっき行った漫画喫茶に再度向かうことにした。幸いなことに。到着して車一台分の空きを見つけて、ようやく気持ちが落ち着いた気がした。

初めて入った漫画喫茶「快活CLUB」。駐車場には中型のトラックや工具をたくさん積んだハイエースなどが多く、これから現場に向かう人たちが現地に前乗りで来たのかなと思わせる。そんな中、深夜に自宅から放り出された哀れな中年男性が寝場所を求めて転がり込んだのだ。

一刻も早く寝たかったので鍵付きの個室を借りた。漫画喫茶なので、一応何か漫画も借りていこうと『ブルーピリオド』と『ヴィンランドサガ』を数巻持っていった。個室内は冷房が効きすぎていて、さすがに暑がりの私でも体調を悪くしそうなくらいだった。受付で借りたブランケットが無ければ眠れなかっただろう。しかし、結果としてはブランケット一枚では足りず、眠気でウトウトしながらもう一枚借りればよかったと考えながら、でももう動けないからと我慢して眠りについた。

途中、午前4時に一度目を覚ましてしまったけれど、その後は7時まで眠ることができた。

帰り際、受付で3,000円ほどを支払いまた車に乗り込んだ。

このまま家に帰ってよいものかと悩み、取り敢えず朝ごはんを食べるために、これまた駐車場のあるマクドナルドに向かった。暖かいコーヒーを飲んで気持ちも落ち着き、マックグリドルとハッシュドポテトを頬張ることで体温も回復してきた。家から持ち出していた本を読みながら、ふとあることを思い出した。

そういえば、昨日思いつきで「ワンピーススクラッチ」を宝くじ売り場で1万円分購入したのだ。枚数にして50枚。それを削ってみることにした。土曜の朝、マクドナルドでワンピーススクラッチを削る、離婚間際の中年男性。なんだか、それだけを聞くととても不幸な感じがするなと思った。こういう時、「やった!100万当たった」と人生持ってる感を演出したいけれど、残念賞の300円が10枚当たっただけだった。

人生ってこういうもの。きっと、宝くじは買い続ければいつか当たるし、仕事も挑戦し続ければどこかで成功する。諦めないことが大事。そう自分に言い聞かせて、家に戻るまでに後は何をしようか考えた。土曜日の朝のマクドナルドは家族づれで一杯だった。わたしからすれば、どの家族もみんな幸せそうに見えた。

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