真相追求をあきらめるくらいなら 興味本位でよくない?

(第8話「興味本位でよくない?」から引用)

今回ご紹介する作品は週刊モーニング(講談社)で連載中の「ジドリの女王(作トウテムポール)」です。

狙うは人生のリベンジ——。
敏腕週刊誌記者が難事件の真相を追う!週刊誌記者として、芸能ネタでスクープを飛ばしまくり、「女帝」と呼ばれた敏腕記者・氏家真知子。ところが、芸能人のスキャンダルでは売れない時代、雑誌のメインを張れず悶々と過ごす日々。そんななか、地方都市で起きた不可解な中学生連続失踪事件を知ったのをきっかけに、真知子に流れる「記者の血」が騒ぎ、眠っていた「記憶」が疼きはじめる——。

闇の中から一筋の真実を掴み、記者としてのリベンジを果たせるか。
人間ドラマの名手が放つ、仕事魂╳サスペンス!!

コミックデイズより引用

定期的に生じる発作

長澤まさみ主演の最近話題のドラマ「エルピスー希望、あるいは災い(KTV)」でもテレビ局が自己批判をするかのようなストーリーが展開されているが、もはやそれは日本のメディアが定期的に催す発作のようなものだと思う。フィクションの世界で罪滅ぼしをするかのように権力と報道の関係性を描いてみるのだ。そして、また発作がおさまると、また何事もなかったかのように権力におもねる姿勢に戻ってしまう。今回の発作のきっかけは森友加計問題だろう。

https://www.ktv.jp/elpis/

まだ最終話を迎える前なので物語がどのような結末を迎えるかは分からない。しかし、テレビドラマでは描ききれなかったものが仮にあるとしたら、漫画誌モーニングで描かれる本作では何をどこまで描けるだろうか。

事件は地方都市で起きた不可解な中学生連続失踪事件
閉鎖的な空間、乏しい情報、無数の関係者。

“調査報道”という言葉が日本にも定着してきたかに思えるが、以下の定義の引用を読めば分かるように調査を続けるには費用が掛かりすぎてしまうため長期間続けることが困難だ。一方で「発表報道」というものがある。発表報道とは、公的機関や企業広報が発表した情報を元に報道をすることだ。つまりは、彼らの情報をほぼそのまま伝えることだ。

エルピスでも大洋テレビ報道部の滝川(役:三浦貴大)が岸本(役:眞栄田郷敦)に対して、「警察発表も無いのに報道できるか」「他社の後追い報道ならできる」との発言をするシーンがある。自らリスクを負ってでも報道する姿勢は無いということだ。

「調査報道」は、一言で言えば、発表に頼らぬ自前の報道、つまり自社で調べて、自社の責任で報道する記事やニュースのことである。1960年代後半から70年代にかけて、アメリカでは「調査報道」が盛んに取り上げられた。ちょうど「ベトナム秘密報告」のすっぱ抜きや「ウォーターゲート事件」といった歴史に残る「調査報道」が紙面を埋めていた時期だった。しかし80年代以降、アメリカの「調査報道」は一気に下降線をたどり始める。21世紀に入って新聞社の買収が相次ぎ、利益優先、コスト削減のため経費のかかる「調査報道」は経営者にとって“金食い虫”としか映らない。

NHK放送文化研究所より引用

一方の週刊誌はどうか?ジドリの女王に登場する元週刊誌記者が言うように、世間が興味を持って当該誌に金を払い続けてくれるかぎりは調査を継続することができる。その点で、調査報道に向いているのは週刊誌(あるいは新聞)などの媒体だといえるだろう。

テレビには瞬発力と拡散力はあるが 長引く問題を本格的に追いかけるのは難しいんだ

(第8話「興味本位でよくない?」から引用)

週刊誌にいた頃が懐かしいよ 世の中が興味を持ってるうちは追いかけることができたからな 読者の興味を引けるように頑張れよ 事件の解決まで追えるかもしれないからな

(第8話「興味本位でよくない?」から引用)

タイミングが良いというか、上記のように現在放送中の連続ドラマ「エルピス」との観比べの中で、本作「ジドリの女王」を位置付けることでテレビ報道と週刊誌報道がどう事件を報道していくのかに注目することができる。

ジャーナリズムとは何か?

まったく黴の生えた質問のようにも思えるが、それが日本のジャーナリズムが定期的にもよおす発作だとしても、一緒になって考えることは無駄ではないかもしれない。一緒に「ジドリの女王」を読みつつ考えていきませんか?

https://www.nhk.or.jp/bunken/summary/research/report/2009_02/090201.pdf

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